閉鎖的なこの町を飛び出して旅をした時の気持ちの記録




2020/06/10日記【異常ゼーマン効果】

 

 

線形代数を少しずつ解きなおしている。固有値固有ベクトルの求め方をやり直したが、わかっていたようなわかっていなかったような、とにかくやっていてストレスがたまる。線形代数の知識が足りないと思うことはこれまでも何度かあったのでその度に演習書をやり直しているのだが、いつも「やっぱそうだよね知ってた」と思いながら解いている。その割には線形代数に対する苦手意識は薄れないし、実際問題は解けないし、自分の中でどう処理されているのかわからない。演習書の扱う範囲と実際の問題で要求される内容が微妙にかみ合ってないことや、1年の時の授業を思い出して線形代数の問題をじっくり見るのが嫌になっていることが原因になって、問題を頭の奥の方で処理できていない感じがする。脳の表面、何なら脊髄でサーっと問題を解いているような。だから解ける問題は一瞬で解ける(でかい数の掛け算とかの時間は除いて)し、解けないものはそもそもやり方がわからない。根気よく線形代数の問題を解く練習をするほかないと思う。演習書を進めていって、面倒くさかったり無駄に思えるような内容のページも粘って解くんだという義務感をもって取り組みたい。

 

量子力学は教科書Ⅰの最後の章が終わった。異常ゼーマン効果についてだった。正常ゼーマン効果は電子の軌道運動による磁気モーメントから縮退が解けるというものだったが、今回の異常ゼーマン効果は、スピンによるスピン磁気モーメントから縮退が解けるというものだった。だったら正常のときと式の形も同じようになるから簡単でしょ、と思ったが、そういう話ではなかった。正常ゼーマン効果はそもそも電子のスピンというものを考えていなかったのに対し、異常ゼーマン効果は軌道運動に加えてスピンも考えたらどうなるかなというお話なので、正常ゼーマン効果の時の議論の拡張ともいうべきものだった。ご存じの通り軌道運動とスピンが同時に出てくるとスピン軌道相互作用を考えなくてはならないうえ、今回は軌道・スピンのそれぞれによる歳差運動の振動数が違うという現象が起きるため、磁場の大きさにどちらの寄与が大きくなるかが変わり、そして固有関数の形が変わってくる(漸近する関数が異なる)という非常に厄介なことをやらなければならない。

結果的には異常ゼーマン効果では縮退は解けるのだがきれいに等間隔にばらけるということはなく、固有値は磁場の大きさの関数となり、その図も今までとは異なりグラフで表現される。

ちょっと疑問に思ったのは、正常ゼーマン効果は実際の物理現象として観測されるのだろうかということ。軌道運動による準位の分裂は方位量子数lが1以上だったら起こり、逆に言えばl=0の時は見られない。ここでスピン量子数は常に1/2の値を持つので、常にスピン磁気モーメントは存在し、準位の分裂が起こることになる。前述の通り、正常ゼーマン効果はスピンは考えずに軌道運動だけを考えて計算した現象であるが、lが0になることはあってもsが0になることはないので「軌道運動は存在するがスピンは存在しない」という状態は無いのでないかと考えたのである。これについての答えが見つからなかったので、今後気にしておくことにする。割と原始的なところだと思うので身近にわかる人がいるかもしれない。もしわかる人がいたら教えてほしい。

 

この地域も今日梅雨入りが発表され、暗くジメジメとした季節になってしまった。

今日の昼過ぎまでは天気が持ちこたえたので、数日分の買い物に行くついでに冬物のコートとスーツをクリーニングに出しに行くことができた。懸念が一つ解消できて安心した。

 

梅雨もオンライン講義も院試もさっさと終わってほしい。心からの願いである。