レンガの積み方識別講座
今回は2年弱前からちょっと気になってる、レンガの積み方についての話です。
ご存知の通り、よく見るレンガは三辺の長さが異なる直方体をしていますが、レンガを使って建築をする際、レンガの向きをどのように配置するかで強度とか見栄えとかが変わってきます。
その積み方の種類を例も挙げながら今ある雀の涙ほどの知識でいっぱいいっぱい頑張ってまとめます。
間違っているところもあると思いますが、気づいた方はご指摘していただけるとありがたいです。
0.予備知識
次から積み方の話になりますが、その前にレンガの辺の名前についてです。
レンガは一番面積の大きい面を上下に配置し、その時の長い方の側面を「長手」、短い方の側面を「小口」と言います。
あともう一つ、下の図で出てくる「角の処理」について。基本のレンガだけでは壁の端っこがうまく処理できないので、端には大きさが異なるレンガを使います。その処理に「しちごう」と呼ばれるレンガを使うのが「しちごう角」、「ようかん」と呼ばれる(おいしそう)レンガを使うのが「ようかん角」です。
まあこれは初めはわからなくてもいいと思います。僕も最初よくわかんなかったし。
1.イギリス積み
おそらくレンガ建築で最もよく見る積み方です。
長手の段、小口の段が交互に積み重なっています。
一番丈夫な積み方で、廃材も出にくいという積み方です。明治19年以降の主流。
後に出てくるフランス積みや小口積みに比べると見栄えが良くないと言われますが、個人的にはそうか…?って感じです。
いや、イギリス積みカッコ良くない?僕は一番好きなんだが…。
イギリス積みの例としては、倉敷のアイビースクエア(旧倉敷紡績所工場)。
ツタで見えねえわ。
内部の画像はこちら。
長手の段、小口の段と分かれていて、イギリス積みだとわかります。
2.フランス積み
イギリスの次によく見る…?積み方。
ひとつの段に長手と小口が交互になっているのが特徴です。
イギリス積みと同じくらい丈夫ですが、手間がかかるのが難点です。明治19年以前の主流。
華麗!優雅!美しい!と何かとチヤホヤされます。
フランス積み、という名前ですが、本来は「フランドル積み」、つまりオランダ南部とかベルギーの西の方で見られるもので、伝わってくる過程で誤解されちゃったらしい。
フランス積みの例として北海道の旧道庁。
ようかん角のフランス積みになってます。
あとは猿島の砲台跡もフランス積みでしたね。
3.小口積み
ドイツ積みとも言う。ぱっと見ではほとんど小口しか見えない積み方です。円形に組みやすいので井戸などの丸いところでよく見ます。
ちなみにキング・オブ・ジャパニーズ・レンガ建築の東京駅は小口積みだぜ!!やったね!!!
4.オランダ積み
イギリス積みと似ていて区別するのがちょっと難しいですが、注目するべきは長手の段。イギリス積みは長手の段の各レンガの端が揃っていますが、オランダ積みは端が交互になっています。
もっとわかりやすく言えば、どっか一つ長手のレンガを決めて、それを2段下にずらしたときにその段のレンガとぴったり重なればイギリス積み、重ならなければオランダ積みです。
って全然わかんねぇな!!説明力がうんち!!!
この積み方はレアです。日本では今のところハウステンボスでしか見たことがありません。それに、これも壁にレンガくっつけてるだけかもしれないし、純粋なオランダ積みの建物は見たことないかもですね。
オランダに行けばわんさかあるのかもしれませんが、街には行ったことないので分からないです。すみません。
5.長手積み
これだよこれ!一番見るのはこれだよ!!と思うかもしれませんが、この積み方は壁の厚さが小口一つ分に限られてしまい、強度が全然出せません。
レストランとかの壁をレンガ建築風に装飾するときとか、強度がそんなに求められない花壇の囲いに使うときとか、よく見るのはそのあたりでは。
イギリス積みの例に出したアイビースクエアでは、長手積みも混在しています。おそらく新しく作った部分が長手積みになっていると思われます。
わっかりやすーい!
6.アメリカ積み
ガーデンウォールともいいます。長手の段を5段くらい重ねてから小口の段を1段積み重ねる、というのを繰り返す積み方。長手段と小口段を交互にするのが面倒だったんですかね。
工期は短いのですが、強度も見栄えも大したことありません。まだ見たことが無いので、一度見てみたいものです。
主な積み方はこの6つです。
色々見てみて、だいぶレンガの積み方は分かるようになった(つもり)なのですが、まだまだレンガの世界は分からないことだらけです。
前のブログ記事でも触れましたが、昨年の夏イギリスに行ってきました。本場だし、イギリス積みの建物だらけなのかな~とか思っていたのですが、あの国にはフランス積みの建物も普通にありました。なんなら上の6つのどれでもない、初めて見る積み方の建物もあって衝撃を受けました(その写真を撮っていないのが悔やまれる)。
レンガの道はまだまだ半ば、もうちょっと詳しくなりたいなーという今日この頃です。
まあ別にレンガの積み方の名前知っていたところで何になるのって思う方もいるかもしれませんが、旅行先でレンガの建物に出会ったときにちょっとうれしくなりますよ。この機会にいくつか積み方を覚えてみてはいかがでしょうか。
参考資料
おわり